賛否両論、カトマンズ市長バレン・シャハの容赦なき政策

カトマンズ市街

FacebookなどSNSでは毎日のように怒り狂ったおじさんやおばさんと、それを相手に一歩も引かないビリジアングリーンの制服を着た小隊による非難の応酬。そして野次馬が集まりスマホで撮影しまくっている。これらはネパールの首都カトマンズで新たな市長によって開始された横暴極まる政策によって起こっている。

34歳のラッパーが首都の新市長に

この大胆で無慈悲な政策を打ち出したバレン・シャハという人物はまだ34歳。ラッパーで人気を得ていたため支持者が多く、無所属で市長選に挑みそのまま当選を果たした。腐敗しきったネパールの政治情勢やゴミが溢れかえるというとんでもない状態がカトマンズで続いていたので、この若き人気のあるラッパーのほうが汚職しないだろうという期待や、特にバレンが掲げたゴミ問題解決のマニュアルがウケて当選しちゃったみたいな感じなのか。

バレン・シャハは市長になるや即座にある政策を打ち出した。それは露天商取り締まり。ネパールでは貧しい人々が荷車を引いて道端で果物を売ったり手作り小料理を即席で作って生計を立てている人たちがたくさんいる。それは特に南アジアや東南アジアで多く見られる光景で、旅情を感じたことがある人もいるかもしれない。バレン・シャハはそういった露天商の人々を交通の妨げになるという理由で徹底的に弾圧した。しかしこの露天商の取り締まり方法は、①まずその方法があまりにも残酷、②そして対象となった人々があまりにも貧しく、③取り締まった場所がそもそも交通渋滞を引き起こす危険性があったの?という点でSNSで動画が拡散し彼の悪名を轟かせることになった。

露天商取り締まりの方法

彼ら取り締まり作戦チームは人通りの少ない路地に入っていく。するといつものように手押し荷台に物を置いて売る露天商がチラホラと各位置に見えてくる。作戦チームは突然その露天商を取り囲み早口にここで売ってはならない!とまくしたてる。そして笛を吹くと、出番を待っていたトラックが走ってくる。作戦チームは荷台のモノをトラックに放り投げ始める。露天商は何が起こっているのか分からず自分の荷台を引き寄せモノが投げ捨てられていくのを防ごうとするが、多人数の作戦チームに取り押さえられ泣くしかない。ある露天商は老婆だった。「私はなけなしの金でこの作物を田舎から買って、ここで売り、ここの住民も野菜を変えてお互い助かっている。儲けはほんのわずかだが、そのわずかな儲けで生きるしかないのに!」と泣き叫んでいた。だが作戦チームは最後は荷台さえもとりあげてトラックに積んでいった。そうすることで二度と露天商をできなることを確認するように。そもそも民衆は汚職が激しいネパールの行政に飽き飽きして若き無所属の市長を選出したのに、最初の政策においてターゲットにされてたのは最も貧しい、店すらも持つができない人々であった。それをパフォーマンスのように作戦チームでワッと取り囲み弱いものイジメをするように食べ物さえも捨てさせる、その名目は交通渋滞の解消というが、こんな狭い路地は最初から車も時々しか通ってないだろう!!というのであった。

いつも言ってきたがネパールというのは非常に自由で優しい国。誰も何も干渉しない。行商人がいる風景というのはある意味で商業の自由に解放されているということではないか。商売でも誰にでも平等に商売をするチャンスがある、とも言えた。こういった人々が商いをする手段を奪われたなら、そもそもまともに就ける職業が少ないネパールにおいて、次はどういった職につくことができるのだろうか。彼らはどうやって生きていけば良いのだろうか?ネパールでは大型のショッピングセンターが台頭し始めている。最初から値札が付いて割引き交渉はなし。市場はチェーン展開するスーパーに独占され、個人の商店はやがて絶滅する定めにあることは明らかだ。

我々が愛するネパールが、このネパールが、21世紀に入ろうともダカトピをかぶり、民族衣装を愛用し、地域みんなが家族のように暮らし、貧しい近隣住民にはご飯をこれでもかと食べさせるあのネパールが、教育熱心にばかりなり、あるいはSNSで煌びやかな人気の人物になり、汗まみれになって生きる人々を軽視するような、手段をそもそも持たない人々に対して理想的な話ばかりして遮断する『現代的な国』に変わってしまうのではないだろうか?嗚呼!!我が愛するネパールよ!!!

彼もギィウを携えた老婆の子供ではないのか!?彼も行商人のおじさんやおばさんに愛され、声をかけてもらい、おいしいおやつを食べさせてもらいながら育ったネパールの息子ではなかったのか!!??!!

違法な私的住宅・建築物を破壊

さて、次に話題を呼びだしたのが建物の破壊である。

FacebookなどSNSでカトマンズ市街にブルドーザーが入ってきていきなり民家を破壊する動画が出回っている。家主たちは泣き叫び、或いは怒り狂い、破壊を遂行する小隊に罵詈雑言を吐き散らすも、民家破壊作業が止まることはない・・・。

実は破壊されている民家は違法建築物である。それは敷地をはみ出して増設された私的構造物、あるいは川の近くに不法に建てられた住まい、などなど様々。対処しないと破壊すると事前に通告し、そしてそれを文字通りに行う。

だが、家主たちも実際のところ対処しようにももうどうしようもないという側面もある。撤去にかかる費用を集められなかったり、増設部分がすでに本体の建物の一部になってしまっていたりなど、そうすぐに対応できる状態にない場合がほとんどである。

以上、モダンな行政に移行するネパールの首都カトマンズで、これまでの曖昧で人治主義的なあり方から一変し、法令順守を徹底する若きリーダーが行う都市改革政策の近況でした。