世界一時間にルーズな国ネパール

伸び伸びと育つネパール人
ネパールが世界一をとれるとしたら、おそらく時間へのルーズさだろう。
それは我々の想像を超えている。
確かに時間に世界一厳しい国日本の目から見ると、多くの国は時間にルーズということになってしまう。
だが、ネパールではそもそも時間に遅れるという次元ではなく「その日になっても何もしてない」のである。

そして口では「今すぐる来る、今まさに向かっている」と言い続け、その日の晩に、その日にはもう来ないことを悟るであろう。
「今まさに向かっている」と告げたとき、彼は本当に家から出ようかなと思っていたかもしれない。
そして、今から動いても到着するころは時間が遅れすぎて碌に何もできないのに行くべきなのか?と迷い始めていたかもしれない。

貴方にしてみれば、「へ???さっき今まさに向かってるって言ってたよね??」と唖然とするかもしれない。
どんな理由であれ、まず最初に謝れ!!!と思うかもしれないが、

さらに驚かされるのが、あなたをさんざん待たせ、嘘をついてさらに待たせ、一日を完全に無駄にさせておいて、本人はまったく悪びれてないという点である。
あなたは周りの人に同調を求めるはずだ。
あいつはさんざん私を待たせておいて、嘘までついて、結局来なかった。なんて奴だ!!と周囲に同調を求めるのではないだろうか。
それは貴方がネパール人ではないからである。

だがネパール人なら、「ああ、そうか。今日は来ないんだって」で終わる。
むしろ「今日はもう遅くなってるから今から来させてももう無駄だよ」と逆に諭されるかもしれない。
同調を求めたはずの貴方は文字通り狐につままれたような顔になるだろう。

そう、一番悪いはずの時間にルーズな彼をまったく咎めないのである。
彼も咎められないから謝ることも知らない。

ネパール人にはネパール人の気持ちがわかる。
「あぁ、そうか。今日はもう面倒くさくなったんだろう。また次回があるしね。うん、そうか。わかったよ。」
自分自身にもそういった面倒くさがりな気分になるときもあるのだから、相手が来なかったのはわかるし、もういいよという寛大さである。
「明日来るよ。」
「よし、じゃあ明日な」


時間に追われない世界。
それがネパールという国である。
洋服を着るようになり、海外に出稼ぎする人も増えても、彼らの中には全く異なる時間が流れている。
彼らは彼らの居心地の良い国に海外の居心地の悪い習慣を持ち帰らない。
彼らが国に持ち帰る、あるいは持ち込むのは、金と便利の良いものだけである。

あの山の中で、中国にもインドにも食われずのうのうとやってきたそのポテンシャルの一つにはきっとこの、動かざること山のごとしの腰の重さも数えられるだろう。