スダン・グルン内務大臣の劇的な辞任 - 『黒いメンバー』が揃ったリストが明るみになり
前回、バレン・シャーについての紹介と彼の政策についての記事中でお伝えした、バレン・シャーの政治スローガンの一つ「アカウンタビリティの必要性と進退の明確化」が早速、彼の右腕であり、Z世代抗議運動(2025)の主導者のスダングルン内相の辞任という形で示されることになった。皮肉なことに、スダン・グルンは、「反縁故主義(アンチ・ネポティズム)」と「反汚職」を旗印としてZ世代から爆発的な支持を得たリーダーでしたが、自身が縁故主義(ネポティズム)の疑惑で辞任に至りました。
きっかけは、スダン・グルンの資産報告の中で、上場企業株欄に未上場企業株が紛れ込んでいた事です。しかも、この未上場企業株の創設者メンバーに、バレン・シャー政権が逮捕・捜査しているマルワリ(インド系ビジネス・ネットワーク)でありネパール有数の財閥であるシャンカル・グループ(Shanker Group)の経営者アグラワル親子の名前が共同オーナーとしてあったことが、「火に油を注いだ」最大の要因です。
48時間以内の「最後通牒」とスダン・グルンの辞任
バレン・シャー首相は、ネパール経済界で影響力を誇るマルワリ(インド系ビジネス・ネットワーク)の一つシャンカル・グループの逮捕を「汚職撲滅」の象徴として進めていた最中です。スダングルンに対し、「アグラワル家との関係と資金の出所を48時間以内に明確にせよ」という極めて厳しい質問状を突きつけました。
スダングルンは、その期限が切れる直前に回答を断念し、「道徳的責任」と「調査への協力」を理由に「辞任」という道を選びました。在任わずか26日間でした。
調査への協力というのは、自身が内相では自身への調査に忖度が起きてしまいかねないというものでした。以下に詳細を解説します。
疑惑の発端 : 資産報告の「嘘」とマルワリの存在
ネパールの法律では政治家を含む公職者に対し、資産開示が厳格に義務付けられています。特に汚職撲滅とアカウンタビリティ(説明責任)の明確化で「クリーンな政治」を掲げるバレン政権において、その閣僚が不透明な報告をすることはあってはならないことです。
今回、スダン・グルンが報告した不動産・ゴールド・株式など自身の資産のうち、保有する約2,745万ルピー分の株のうち、500万ルピー分が「Star Micro Insurance Company Limited」と「Liberty Micro Life Insurance Limited」という2つの保険会社の未上場株でした。これがなぜ問題かというと、ネパールの公職者が提出する資産報告書には、株式の項目に株式の種類を記載する欄があり、「創設メンバー株(Promoter Shares)」と「普通株(Secondary Market)」かを明記するのが義務があるからです。
「創設メンバー株(Promoter Shares)」とは、企業が設立される際に中心メンバー(プロモーター)に割り当てられる創設者・発起人枠の株式。一般の投資家が買う「普通株(Secondary Market)」とは異なり、企業の設立メンバーや特別なパートナーといった限られた人のみが取得できる。特に内務大臣のような立場の人物が企業の「創設メンバー」であることは、その企業の「経営主体に近い立場」として、行政的な便宜供与の疑いを生むため、ネパールでは厳格な開示が求められています。この違いを曖昧にし、単なる「普通株」投資と報告することは、利益相反の有無を判断する材料を隠したことになり、閣僚としての倫理規定違反に問われました。
これについて、スダン・グルンは「『株式投資』として一括報告しただけ」と弁明しました。
しかし、明確に区別して報告しなかったのは、「なんらかの癒着の根本を隠蔽しようとしたのでは?」という追求が始まった。しかも、その2社の創設メンバー株には現在バレン政権が逮捕し捜査しているマルワリ系財閥シャンカルグループの経営者も含まれていました。
「黒いメンバー」勢揃いのリスト
「クリーンな政治」を掲げる政権の内相が、現政権が捜査中の実業家たちと共に「創設メンバー」として名を連ね、さらにその報告が曖昧だったことが、アカウンタビリティ(説明責任)を欠くと判断された決定打となりました。
創設者枠には、以下の人物たちが名を連ねていた。
- スダン・グルン(内務大臣)
- シャンカル・ラル・アグラワル(シャンカル・グループ会長/マネーロンダリング容疑で逮捕)
- スラブ・アグラワル(同グループ副会長/同じく逮捕)
- ディパック・バッタ(「政商」と呼ばれたが今年4月マネーロンダリング容疑で逮捕)
未上場株は親密でないと手に入らない。「汚職を摘発する側」が「摘発される側」とビジネスをしていたという構図が疑われたのでした。更に、捜査により当時スダン・グルンが未上場株を買う際、前日に彼の口座に500万の入金があり、次の日に2つの保険会社未上場株を250万ずつ買ったというタイミングの不自然さも明らかになりました。
メディアは、これらの入金は正当な融資ではなく、将来の政治的便宜を見越して「株を買わせるために提供した資金」、つまり実質的な贈賄ではないかと厳しく追及しました。
一市民となったグルンに対して警察(CIB)が贈賄や虚偽報告の容疑で本格的な捜査を続けています。
ネパール第一主義(プロネパール)を掲げるバレン政権で、閣僚が「インド系マルワリ資本のネットワーク」と接触している点を切り捨てることは、まさに象徴的な出来事です。
市民の反応
さて、潔い辞任をしたスダン・グルン。街頭では彼の復帰を求める支持者によるデモが起きています。 無実が証明されればすぐに戻ってきてほしいという熱いメッセージが多く、「#BringBackSudanGurung」といったハッシュタグもSNSで見かける。
