ネパールの総選挙の仕組み【性別・カースト格差もしっかりケア】

ネパールの総選挙

ネパールの総選挙は、ネパールの政府を立て政策を決定する最高立法機関である下院の議員275名を選出する選挙。本記事はそのネパール独自の選挙方法を解説する。カースト格差克服や女性社会進出促進を掲げる枠組みもあるので最後までお見逃しなく。

ネパールの総選挙の概要

下院議員は小選挙区と比例代表で選ばれる並立制

そうして小選挙区議席(165議席)と比例代表議席(165議席)合わせて275議席の議会のうち、過半数以上の議席を獲得した党が首相を立てる。

小選挙区(165議席)

小選挙区は個人に投票する。有権者は自分のエリアの好きな立候補者に1票投票する。各エリアで当選した人が議席獲得。

比例代表(110議席)

比例代表は党に投票する。有権者はネパール全国どこからでも一斉に好きな党に1票投票する。政党の総得票率に応じて比例代表議席が割り振られる。現在得票率1%につき約1.1議席に変換されている。ただし、得票率3%以下だと分配対象から除外され比例代表議席を貰えない。

獲得した比例代表議席は、党が選挙前に出した比例代表の候補者名簿の順番で与えていく。

例、比例代表選でA党に投票したネパール人が全体の3%だったら、得票率3%以下なので比例代表議席はもらえない。B党は比例代表で40%得票したら、比例代表議席を44議席貰える計算になる。44名は候補者名簿の上位から順番に拾われる。これに小選挙区で勝った議員の議席を足して、b党の総議席数となる。

つまり有権者は個人と党の二回投票する機会がある。小選挙区用の投票用紙と、比例代表用の投票用紙を一枚ずつもらう。

党にとってはネパールの選挙で当選する以外にクリアするべき点が3つある。

  • 1. 保有議席の33%は女性じゃないといけない
  • 2. 比例代表の候補者名簿は各カーストを人口比通りに網羅し、かつ各カースト枠内の女性率は50%以上じゃないといけない
  • 3. 実際に当選する人の最終的な配分も、各カーストを人口比通りに網羅していないといけない。

以下にこれらをクリアする要領を説明。

議員の33%は女性じゃないといけないルール

ネパールの憲法では、連邦議会(および州議会)の全議席のうち、少なくとも3分の1(33%)を女性が占めることが義務付けられています

各政党は、自分の政党から当選した議員全体(小選挙区 + 比例代表)の中で、女性が33%に達するように調整しなければなりません。

選挙管理委員会は各党の議席の女性率が33%であることを厳しく取り締まり、満たない政党は憲法違反となるため、各党必死で女性を入れ込んで調整している。

、ネパールでは小選挙区では男性が勝つ傾向がある。そのため、各党は女性議席の比率を確保するために、比例代表議席を与えてることが多い。

議席を貰える順番リストで例え男性が次の順番だったとしても、女性の比率が足りてない場合は、男性をスキップして女性を先に入れていってでもとにかく女性率を確保する。

従ってこの女性33%ルールは弊害も生んでいます。比例代表議席の順番リストが事実上の女性枠となってしまい、とりあえず女性であれば誰でも議席を貰える状態に。これにより、もし単純に優秀さで優る人がたまたま男性であった場合、比例代表議席優先順位通りに議席が貰うはずだったのが、スキップされて満員となる可能性がある。そうなると能力が国のために発揮されない。

各カーストを人口比通りに配分するルール

比例代表で議席を貰える人の名簿を作成する段階から、各カーストグループを人口比通りに網羅しなければならない。しかも各カーストグループの名簿において女性比率は50%以上なければならない。

ここで矛盾が生じる

「カースト枠内の50%以上が女性でないといけない」と「党議席全体の33%以上が女性でないといけない」

各カーストの50%が女性ということだと、党全体の半分が女性になり、33%どころではなくなるのでは?

女性50%以上はあくまで名簿内でのルールであり、実際の当選者選びの段階で、最終的に党内議席が女性33%以上になるように足りてない場合は女性を優先的に入れ込んでいって調整される。

しかしカーストグループに関しては実際の当選者も人口比通りに網羅しなければならない。そのため、人口比率通りになるように当選者選びの段階で足りてないカーストを優先的に入れ込んでいる。

そうすることで、各カーストを人口比通りに網羅と、女性33%を実現!

つまり、比例代表は小選挙区で決まった議員の男女比率とカースト比率を見ながら、ケースバイケースで名簿の中から足りてないカーストと性別を拾い上げていく調整弁の機能を担っている。

なので、比例代表議席は通常候補者名簿の上位から順番に拾われるが、ケースバイケースで優先順位を変更しなければならない。

例えば現在はダリットがネパール全人口の約14%いるので、100議席持っている党は14議席分はダリット議員でないとならない。

モンゴロイド民族ならネパール全人口の約30%なので党議席の30%がモンゴロイド民族でなければならない。

最終的に各党の議席の33%が女性になるように整えます。各党がしっかり33%女性にすることで、自動的に議会全体も33%が女性になる設計になっています。

なので、議会全体の女性比率を33%に保つため、どこかの党が他より多く女性を配分する必要はありません。

徹底した機会平等化ですね。世界に先駆けて同性婚を認めた国らしく思い切った制度ですね。性別間格差のみならず部族間格差も徹底的に撲滅しようという気合を感じます。

過半数確保できない場合

もし過半数を超える党がないまま、どの党も連立合意達成できないとどうなるか。

過半数獲得できなかった場合は連立を組んで過半数にする。その際、党の規模大小関係なくどこと組んでも良い。仮に過半数に満たないものの最も多く議席を獲得した大きな政党があっても、小さな党が集まって過半数を超えればそれで勝ちとなる。

連立工作がうまくいかず、過半数(138議席)を確保できない場合、4つの段階的ステップがあり、それでも決まらないと総選挙やり直しとなります。

  • 1. 連立政権の模索
    大統領が期限付きで連立をまとめるよう各党に促す
  • 2. 党対党で妥協 ステップ1が期限内にまとまらなかった場合、大統領は議席数が一番多い政党から首相を任命。
    首相は就任から30日以内に、下院の過半数から信任投票得を獲得しなければならない。
    ここで政治的駆け引きから党同士の合意が得られず過半数獲得できない場合次のステップです。
  • 3. 個人判断での連立
    党の方針が合わないのなら、個人一人一人で支持するか決めて過半数獲得するよう大統領が促します。
    大統領が促す形になることで、個人個人も党を超えて判断する後ろめたさが減ります。
  • 4. 解散して総選挙やり直し
    これでも決まらなかった場合、大統領は下院を解散します。
    その後6か月以内に再び総選挙を行わなければなりません。

チェトリ族は人口比で16%を占める。しかも地域によってはチェトリ人口が40%を超えるエリアもあるため、非常に有利だと言える。

政治的知識を充分に持たない人でもカースト比率を維持するためだけに議員候補になる可能性がある。

などなど、色々な懸念要素も考えられるが、支援し続けカーストや性別による格差を無くし、特定の民族グループのコミュニティの力を底上げする必要がある現実もある。

以上、ネパール政府を立て政策を決める下院議員を決める『ネパールの総選挙総選挙』についての解説でした。

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