バフン族|ネパールの最上位カースト(ブラーマン)について解説

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この記事ではネパールのカースト制度でバラモン階級(司祭階級=ブラーマン)だったバフン族(バウン族=Bahun) の種類、内部序列、苗字一覧、結婚に関するルール、ジャートのルール、そして実生活について解説します。日本語ではバフンと発音しますが、現地ではバウンの発音に近く英語ではBahunとつづられていますので、現地人の発音に従って考えると区切りはBah・unが妥当だと思います。

ネパールのバフン族とは?

バフン族とはネパールにかつて存在したカースト制度の階級序列1位だった司祭階級の人々の総称です。顔立ちは一般的に鼻が長く高く尖っていて、瞳が落ちくぼんでいるのが特徴です(参考:典型的なバフン族の顔)。ネパールにいるさまざまな人種のなかでモンゴロイドと最も正反対の容姿をしています。最上位だった名残で今もネパールの行政上層部の要所にバフン族が多くいます。司祭階級と言いましても全員が要職につくわけはありませんから、ほとんどのバフン族は自給自足の農家として生計を立てています。

ブラーマン階級自体はネワール族(カトマンズの原住民で中間層)やマイティル系ネパール人(タライ平原で違う言葉を話すインド系)などのヒンズー教を信仰する諸民族コミュニティ内にもそれぞれ独自に存在しますが、それらはあくまで部族内で勝手につくった階層に過ぎません。ネパール国のカースト制度で正式にブラーマンと定められていたのはアーリア系のバフン族のみです。

バフン族の分類

バフンにはクマイバフンとプルビヤバフンの2種類があります。これは派閥であって序列ではありません。この派閥は出身地とネパールに来た時期が基になっています。クマイバフンは後からネパールに入って来た北インドのヒマラヤ地帯の特にクマオンやガルワールのブラーマン達でクマイバフンとして認識されました。それに比べプルビヤバフンはずっと以前からネパールに定着した人々です。クマイバフンのようにどこから来たかがはっきりとしていません。

クマイ・バウン

クマイバウンとは読んで字のごとくインドのクマオン(ウッタラカンド州)のバフンと言う意味です。クマイバフンの人々は現在はネパール全土に分布していますし中には苗字だけ残しすでに土着のバフンと婚姻してクマイでなくなっているケースもあります。

またカースト制度の廃止から長い年月を経て、特に昨今はカースト意識の希薄化にともないクマイバフンやプルビヤバフンがあることを知らない人もいますし、例えバフンであっても若者であればすでに知らなくなっているケースもあります。しかしネパール西部などに行くとやはりクマオンが隣接していますのでバフン以外の人でもクマイバフンの存在について認知している人が増えます。

プルビヤ・バウン

プルビヤはネパール語の「プルバ=東方」という言葉からきています。クマイが入ってくるよりもっとずっと前にすでにネパールのメインエリアに土着した人々です。

バフン族内部の序列

バフンにはクマイ派とプルビヤ派がいることが分かったかと思います。次はバウン内部の序列です。バウンには大きく分けてウパッデ(ウパッデャ)とジャイシがいます(さらに小さなグループにはヤギの分野に長けたカシニや名字の末端がガインで終わる5姓などがありますが)。ウパッデは混ざり気のないバウンという意味です。ウパッデはパンディットになったり、バンディットになる学校を卒業してなくてもパンディットが不在の時に簡易的に代理になれますが、ジャイシはカーストを問わず誰も司祭になることはできませんでしたし代理にもなれません。ウパッデバウンとジャイシバウンの大きな違いはそれです。クマイ派にもプルビヤ派にもウパッデバフンとジャイシバウンが存在します。

  1. クマイウパッデ
  2. クマイジャイシ
  1. プルビヤウパッデ
  2. プルビヤジャイシ

クマイウパッデとプルビヤウパッデが同ランク、クマイジャイシとプルビヤジャイシが同ランクです。

同姓でも地域によって階級が異なることもあります。そうなる理由としては、現地で異カーストと婚姻(インターカースト結婚)した場合にジャートが変わっているケースなどがあるからです。仮に数世代前に異カーストの婚姻がありその子孫が増えた場合、その集落だけジャートが違うといったこともでてきます。たまたま引っ越した近くに同姓がいたとしても、階層は違うなどのケースも出てきます。なので紛らしいケースの場合はローカルエリアの司祭やソサエティに聞いてみないと分かりません。以前アディカリという方がいましたが、彼の集落は全員がチェトリでした。この方は何でも隠さずに話す人で、彼の集落では異カースト婚でチェトリになっていたということでした。

まぎらわしいこともあります。例えばバウンを良く思ってない人などはバウンをバウンで無いと嘘をつく人もいます。例えば私の知人にバラコティというチェトリ族の人がいましたが、その人はバウンがあまり好きではなく、あるバウンのAさんのことををチェトリだと言っていましたが、バウンの人々はAさんはバウンで間違いない言っていました。そういうこともありました。

また、ネパール人は自分のジャート以外のことは詳しくない人も多いので、単純にバフン族のカーストについて知らずに適当に言うケースもあります。特にネパール人は即席の知ったかぶりをする人も多いので慣れてくるまでは紛らしいところがあります。

バフン族の外見の見分けは大雑把に言うと鼻がシャープで高いことと眼が窪んでいることですが、バフン内でクマイやプルビヤやジャイシがそれぞれ歴然とした見た目の違いがあるかというと微妙なところで、実体験としてはクマイは自分が北インドを旅していたときに見た丘陵の人々とそっくりなケースが多いと思ったことはありますが全員がというわけでもないですし、他には、ジャイシはなんとなくですが男女共に身長が高く骨格が大きな人が多い印象があります。これはジャイシに関しては良く観察すれば共感者がいると思います。あくまで見てきたなかでの印象ですし、ウパッデにも体格の良い人はいますので全部が全部というわけではありませんが。通常バウンは身長が低く華奢な体格をしています。まただやはり混ざっているケースなどもあるので全員が一概にこういう見た目という状況ではないですね。

バフン族の苗字一覧

クマイバウン

アワスティ、ウプレティ、オージャ、オリ、カレル、カデル、カンデル、スィワコティ、セダイン、チャタウトゥ、ティワリ、トゥリパティ、バット、パタック、パネル、パンタ、プラサイ、べトゥワル、マイナリ、ミシュラ、レグミ、レカック、ロハニ

Awasthi, Upreti, Oja, Oli, Kharel, Kadel, Kandel, shiwakoti, Sedhain, Chataut, Tiwari, Tripathi, bhatt, Pathak, Panel, Panta, Prasai, Bhetwal, Mainali, Mishra , Regmi, Lekhak, Lohani

プルビヤバウン

アチャリャ、アディカリ、アリャル、ガウタム(ゴウタム・ゴータム)、カティワダ(カチワダ)、カナル、ギミレ、ギャワリ、クインケル、コイララ、サトゥヤル、サプコタ、サングラウラ、シャルマ(サルマ)、スィグデル、スィムカダ、ソティ、ダカル、ダハル、ディタル、ティミルスィナ、ティワリ、デブコタ、ドゥンガナ、ドゥンゲル、ドゥワディ、ニラウラ、ネウパネ、ネパール、バンスコタ、バッタライ、パラジュリ、バラル、パンディット、ピャクレル、プダサイニ、ポクレル、マルハッタ、ミシュラ、ムドゥバリ、ラミチャンネ、ラムサル、ルイテル、ルパケティ、レグミ、ワグレ、チャウラガイン、フマガイン、グラガイン、チャパガイン、バジャガイン

Acharya, Adhikari, Aryal, Gautam, Khatiwada, khanal, Ghimire, Gyawali, kuinkel, Koirala, Satyal, Sapkota, Sangraula, Sigdel, Simkhada, Soti, Dakal, Dahal, Dhital, Timilsina, Tiwari, Devkota, Dhungana, Dhungel, Duwadi, Niraula, Neupane, Nepal, Banskota, Bhattarai, Parajuli, Baral, Pandit, Pyakurel, Pudasaini, Marhatta, Mishra, Mudbhari, Lamichhane, lamsal, Luitel, Rupakheti, Regumi, Wagle, Chaulagain, Humagain, Guragain, Chapagain, Bajagain

ジャイシの名字

既述の通り、婚姻などによって同じ苗字にジャイシと非ジャイシの2種類あったりなど個々のケースで異なりますが以下の苗字は元来ジャイシのみです。

リジャル(リザル)、ブサル、リマル

Rijal, Bhusal, Rimal

チェトリと被っている苗字

ラミチャネ、パタック、アディカリ(アディカリは多くの場合バフンです)、バッタライ、チャウラガイン(ガイン5姓の一つ)、ミシュラ(タライ系)

以上はあくまで目安です。カースト制度廃止からすでに半世紀以上が経ち、特に20年前あたりから異カースト婚も増加傾向にあり、バフンがチェトリと婚姻することも増えています。特にバフン族の男性は自分の顔がアーリア過ぎるため、チェトリとかのように少しモンゴロイドっぽい顔立ちのほうが好きらしいです。異なる顔のほうが良いようです。それでチェトリと婚姻したケースがかなりあります。そのため、バフン父親の苗字であるものの、チェトリとミックスしている人も実はかなりな数います。顔立ちでもけっこう分かります。

ミシュラ姓はマイティルにも見られます。ブリビヤバフンにはインド中部と共通する苗字も幾つか見られますが、血統が同じであるわけではありません。クマイバフンのように明らかにインドから来てルートも分かっているケースを省けば、ほとんどのネパール人は苗字がインドと被っているからといって血統も同じであるわけではないのです。

バフン族の婚姻はゴトラ(祖)で決まる

各苗字にはゴトラと呼ばれる祖があります。例えばゴータム姓のゴトラはバルドワージとなっています。バルドワージは神話に出てくる聖人です。バルドワージゴトラとは別にバルドワージという名字がチェトリにありますが、バフン族のゴトラとは関係ありません。ゴトラは通常各姓に一つですが、2つある姓も少ないですがあります。

例えばポクレル姓。ポクレルのゴトラはバルドワージとアートレアがあります。

ゴトラがバルドワージのポクレルとゴトラがアートレアのポクレルは同じ姓ですがゴトラが違うので婚姻関係を結ぶことができます。

仮にもし両者ともにアートレアのポクレルであった場合、婚姻関係を結ぶことはできません。

ゴータム姓のゴトラもバルドワージです。従ってゴータムはバルドワージゴトラのポクレル姓とは結婚できませんが、アートレアのポクレル姓とは結婚することができます。

このゴトラは地域の神官などによってしっかりと記録され保存されています。

そして、バフン族の人々は同じゴトラと誤って婚姻することがないようにきちんと自らのゴトラを認知しています。

バフン族は異階級と婚姻すると階級が落ちていた。

カースト制度が現存していたころはバウンにとって異階級との結婚は階級落ちを意味していました。そのためカースト制度が廃止されるまでは異カーストとの婚姻は極めて少ないものでした。今は公式に階級が落ちるわけでもないので関係なくなってきています。

堕ちるランクは2種類でブラーマン以外の階級と結婚した場合は通常チェトリ扱いですが、スードラと結婚した場合のみスードラ扱いになっていました。

よって苗字は父親から受け継いだバウンのものだが階級は違うといったケースも時々あります。

ミドルネームも区別されていた

苗字はバウンでも身分はチェトリに墜ちている場合にはヒントもあります。例えばミドルネームにバハドゥルが入っている場合などです。バハドゥルは勇敢さを意味し戦士などに由来する名前であるため、チェットリやマガールが好んで付けます。反対に司祭階級のバフンが付けることはありません。バハドゥルのミドルネームでラストネームがバウンの場合、それはジャイシかチェットリであることが察知できました。現在はこの慣習はなくなり、ミドルネームはあらゆる身分があらゆる名前を好きにつけています。名前そのものもかなり適当になっています。

バフン族の伝統的な生活

バウンは基本的に菜食とミルク中心の食生活で肉はヤギしか食べません。肉は食べないというのは建前のことで、プライベートでは食べています。さらんい都市に引っ越したバウンは近年はなんでも食べるように変わってきていす。そして海外に行って視野が開けた人などはもはや食に対するこだわりも建前もなくなります。昔はほんとにベジタリアンも多かったのですが、今はベジタリアンと言ってもあくまで菜食中心の食事をし、肉も食べるが回数は少ないといった感じになってきています。もちろん反対に絶対に自分は肉を食べないというのをアピールする人もいます。

肉食に関しては例外的に司祭になりたいならそれ専門の学校に通わなければなりませんし、完全菜食主義をしなければなりません。バフン族は司祭階級ですが、バフン族であれば誰でも司祭になれるというものではないのです。ですがこれは個人個人の信条であって、司祭でもないのに自分はバフンだからベジタリアンと言う人もいれば、司祭なのに肉食べた人も見たことあります。ネパール人はヤギ肉が大好物なので儀式のときに良くつくられるヤギ料理なんかはやっぱり食べたくなるみたいです。

ジャナイと呼ばれる白い紐

バウンの男性はジャナイと呼ばれる白い紐を肩から袈裟懸けに帯びています。女性はしません。これは衣類の下、素肌にかけるものでコットン製の細い糸でヒンズー教では聖なる紐と考えられています。このジャナイはバウンの伝統であり、チェトリ族全員とネワール族のネワールバフンとネワールチェトリ(ネワール族内にネワールだけのバウンとチェトリなど族内階層がある)もバフン族からジャナイを与えられ帯びることを許されます。

伝統的なバウンの生活例としては毎朝行水とか自分のキッチンにも体を洗ってから入るとか、異ジャートをキッチンに入れないといったものがありましたが、そういう伝統は風化してきています。

バフン族の著名人

ラメシュ・カレル(Ramesh Kharel)
BPコイララ