ネパールのガイネ族|吟遊詩人というカースト

サランギ 昔RPGゲームなどで見た吟遊詩人という職業が今もほんとにあるとはネパールで見るまで知りませんでした。まだネパール初心者だったある日、バスに乗って山間部を移動していましたところ、サランギという小さなバイオリンのような楽器を持った旅人風の小柄な男性が乗ってきました。自分の名前はガンダルバです。この度はかくかくしかじかと自己紹介をはじめ、サランギの演奏が始まりました。人種的にはアーリア系と思います。服は薄汚れていましたし、髪も何日も洗ってないように艶と埃が混じった感じでした。その男性は席に座ることなく、通路に立って楽器を弾きはじめました。舗装されてない道路を旧式のバスで行きますので結構揺れますが、男性は慣れた様子でした。
異国ネパールの山を見ながらネパールらしいリズムが物凄く良い感じでした。乗客は男性の歌を聞きながら時々笑います。次の歌では乗客は同情する目で男性を見ます。最初の歌は楽しい恋の歌、二番目の歌は自らの境遇を謳った悲しい歌でした。歌い終わると男性は乗客に手で金をくれと合図して回りました。乗客はけっこうお金をあげていました。そして降りて行きました。それはガイネ族と呼ばれる吟遊詩人カーストでした。 ガイネの人々はネパール中西部から西部にかけて最も多く分布しています。ガイネは人口が少ないためコミュニティーの協力が追いついておらず、就業機会が不足しておりカースト制度が事実上廃止の今も吟遊詩人するしかないという状況下にあります。吟遊詩人たちは旅をしながら稼いでおり、通常は一人で長距離バスに乗って2,3曲弾いてお金を乞い、途中下車してまた次の長距離バスに乗り、また途中下車、そうしてバスをはしごしながら日没までに家に戻るか宿を取ります。 その生活は大変に厳しいもので、また家族と離れて暮らす形態も珍しくなく悲壮感が伺えます。