ネパール人は如何にして相手のカーストを見分けているかをご紹介します。

2018/1/5
民族服を着たネパール人たち

多民族国家ネパールでは各カーストが独自の生活スタイルを確立しているため、相手のカーストを認知する必要があります。本記事ではネパール人はどうやって相手を識別しているかについて、そして識別する必要性について例を交えながら解説します。この記事を読めば貴方もネパールで相手の所属する民族が分かるようになります。相手のカーストを知るということはネパールで生活しコミュニケーションする上でとても大事なことになります。

カーストの見分け方

ネパール人は民族服や人種、つまり外見である程度のカーストを推測できます。そして次に名前を聞くことでより正確に分かるようになっています。以下に項目分けして詳しく書いていきます。

ネパールの民族服一覧

最も単純な見分け方として民族衣装で識別する方法があります。どの民族も個性的で綺麗な民族衣装をもっていますので幾つかご紹介します。

パルバテ・ヒンドゥー

ネパールの伝統的な服 チョーバンディ民族服

バフン族・チェトリ・ダマイ・カーミなど丘陵のアーリア人グループが伝統的に着ていた衣服でチョーバンディといいます。今も田舎のほうにいくとチョーバンディを着た女性を見ることができますし、まれにですが若い女性も着用して農作業などしている場合もあります。これに加え、主婦など都会に住んでいるケースはサリーやクルタスルワルの着用率が非常に高いです。ネパールの伝統衣装というなら、本来はこのチョーバンディです。

タマン族

ネパールの伝統的な服 タマン族の民族服

タマン族の民族衣装はグルン族と似ています。ですが四角い形をした帽子をかぶっている場合は容易に識別できます。タマン族の顔立ちはグルン族よりも平坦な顔立ちですが、鼻筋がスッと通った人が多いです。下はロングスカートになっています

グルン族

ネパールの伝統的な服 グルン族の民族服

グルン族はガリャックというベルベッド調の布で胸元から膝まで覆うように着ています。前述のタマン族との違いはベルベット生地である点でしょうか。男性は白い独特なマントを着用します。マントは背中側が袋のようになっていて物を入れることもできます。山岳民族らしい険し道で物を運ぶときの利便性も考慮してあります。

マガール族

ネパールの伝統的な服 マガール族の民族服

前述2部族と似ていますが、大きな違いは肩に白いスカーフをのせている点です。それから顔立ちは頬が大きく唇が分厚い人が多く、そのため丸顔に見える人がとても多い印象です。

シェルパ族

ネパールの伝統的な服 シェルパ族の民族服

他のネパール民族衣装と根本的にデザインが異なっていることが分かると思います。中華とかチベットを連想するデザインですね。シェルパ族は体格が大きくなりやすいようです。経済的な事情で痩せている人が多いですが、比較的裕福なシェルパたちになると、ネパールのどの民族よりも大きく骨太な体格をしています。男女ともにモンゴル人のような体格になりやすいのも民族的特徴と言えるかもしれません。これは見分けるうえで大きなヒントになりえます。

ネワール族

ネパールの伝統的な服 ネワール族の民族服

カトマンズ盆地の先住民ということでカトマンズに人口が集中しているので、一度はこういった衣装を着た人を見たことがある人もいると思います。黒と白と赤を基調とした伝統衣装です。カトマンズで祭りがあるときは、ネワール人だけでなく他部族の若い女性などもファッション感覚でこの衣装を身につけることもありますので、間違わないように。

ネパールの伝統的な服 マハルジャン カースト 民族服

更にこちらはネワール族のなかのマハルジャンカーストの人々の伝統衣装です。

タルー族

ネパールの伝統的な服 タルー族の民族服

タルー族は白いサリーが特徴です。タルー族はタライ平原の原住民です。暑い地域なので軽さ重視、色は見た目にも涼しい白なのが爽やかな見た目になっています。ですが普段伝統衣装を着ているタルーを見ることはほとんどありません。

ディマル族

ネパールの伝統的な服 ディマル族の民族服

本当のディマールドレスはブラウスは着用せずオフショルダー式のドレスですが、現代では上半身も衣類を着用するケースもあります。ディマルの人々もタルーと同じく平原地域に多く、やはり暑い地域らしいデザインになっています。

ネパール人は普段も時々、そして祭りのときは必ず民族衣装を身につけるため、上記の伝統衣装を知っているとかなり分かるようになります。では次は民族衣装を着ていない場合は?その場合は苗字で識別します。

ネパールでは苗字でカーストが分かる

ネパールでは苗字で民族が分かるようになっています。それぞれがその民族にしか無い苗字を名乗っているからです。

例)「私の名前はナムラタ・パンタです。」

この様に言うだけでバフン族のパンタさんと即分かる理由は、パンタ姓はバフン族にしかないからです。ネパールの諸民族の苗字は民族独自のものが使われており、バフンとカーミ、チェトリとマガールは似たような響きの名字が多いですが、他は民族ごとで苗字の音感が異るためだいたい予測できるようになってきます。ネパール人の苗字はそれほどたくさんありませんのでネパールに住んでいるとだいたい全部覚えてしまいます。

人種でカーストを判別

民族は人種によって分かれているケースがほとんどです。あの顔の民族はアーリア系、あの民族はモンゴロイド系、と最初から顔をみただけで認知されています。またカースト制度時代は同じ部族の人とのみ婚姻をしていたので、各部族ごとで面白いほど顔立ちがパターン化されています。なのでアーリア系であの顔立ちならおそらくあの部族なんだろうな、と予測できてしまうわけです。

人種で予測し、民族衣装で予測し、苗字で予測する。というだけでは分からない場合もあります。その場合は次のステップです。

直接尋ねて判別

以下二つのケースの場合、苗字だけでは識別できません。

  1. 異民族に同じ苗字が存在していることも時々あります。その場合は苗字からだけでは識別できません。
  2. 混血している場合は苗字と顔立ちが一致しません。

例)苗字がA族のものだが実は親が異民族のB族と結婚していたためどちらともつかない顔立ち。

こういう場合は直接聞くしかありませんし、聞くことが悪いことでもありません。(稀に上の身分に見られたくて嘘をつく人もいますが)

シンプルに、「貴方の部族はなんですか?」とネパール人の皆さんは聞いています。

カーストを見分ける必要性

ネパール人はよく私とあの人はカーストが違うという話をします。部族が違う、即ちそれは風習が違うと言う意味で使っています。

例)A族とB族はどちらも牛肉を食べませんが、B族は水牛肉なら食べます。しかしA族は水牛肉も食べません。

こういったことが一つの国のなかなのに起きています。個人的な好き嫌いではなく、部族のルールでそれぞれが生きている状態です。ですので互いのカーストを事前に分かっていれば次のような調整ができます。

例)水牛スープを作ろうと思いましたが、今日は水牛を食べられないAさんが来るので他の料理を作っておきましょう。

このように対応できます。カーストを知るということは、互いを理解し共存するために必要な側面もあるということですね。

例)C族は仏教徒ですが、D族はイスラム教徒です。C族とD族がヒンドゥー教徒のE族と共に集まるとしたら、それぞれをもてなすために何をするべきか。

なぜなら民族によってのみならず宗教によっても戒律が存在しています。イスラム教徒は牛肉を食べますが、ヒンドゥー教徒にとっては牛は神様です。争いを避けるために事前にぞれぞれのカーストを見分ける必要があるのです。

ネパールのカースト識別のまとめ

現状ネパールで互いのカーストを認識することは、異なる人々のグループが交流する上で必要なんだな、と思います。各民族を画一的に統一するのではなく、民族それぞれの独自性は許容するというところに、ネパールのキャパシティの広さを感じますね。