南インドのカースト制度構成
南インドに行くとクシャトリアと言う言葉はない。カースト制度がインド大陸各地で若干異なるのは、そもそもイギリスがインド帝国として統一し、それを現在のインドとして継承するまでインドという国は無かったためだ。
そもそもイギリス以前、ムガル帝国がインド大陸を統一した時期はあったが、それはイスラム国家であり、ヒンズー教徒はイスラム教に改宗させられるなど弾圧の対象であった。そのため当時はインド大陸に存在するカースト制度の統一には至っていない。
以前も話したが北インドの友人は『この地域では』神聖なカーストと認識されている、という言い方をしていた。それが全てを語っているように感じた。なぜなら、地域が変わればそもそも階級の呼び名さえ変化するからだ。南インドのテルグ語を話す地域などの庶民にクシャトリヤと言う言葉を投げかけても、それを理解しない人が多くいるのだ。または、南西部などではヴァルナそのものも簡略化された地域もある。
南インドのカースト序列
南インドのカースト制度は以下の様な構成になっている。
レッディ | 序列一位 |
ネイアース | 序列二位 |
ヴァイシャス | 序列三位 |
Bc-a | bcとはbackward casteの略 |
bc-b | padma shali(テーラー)などが多い |
Bc-c | backward casteのカテゴリA,B,Cと言った括りになっている |
Sc | scとはscheduled casteの略 |
Dalit | アンタッチャブルの扱いを受けた人々 |
特徴としては、階級の呼び名も略式ではあるもののその意味は『backward caste=遅れたカースト」など露骨であることや、SC以下はクリスチャンに改宗した者も多い点、南インドのカースト制度序列1位で支配階級であるレッディの人々の顔は北インドのカースト制度序列一位の司祭階級の人々の顔立ちと異なる点などがある。
バックワードカーストの中のbc-bのpadma shali(テーラー)は織物を扱うカーストだが、バックワードとは言うものの、中にはずいぶんと裕福な物もいて、その財力でもってレッディよりも経済的に自由な生活を送っている者もいる。
地域によってはカーストに基づく階級と言う考え方は既に時代遅れになりつつある。若い世代では異カーストの結婚も急増している。さらに、社会的地位も必ずしもカーストの階級と比例するわけでもなく、実際、アーンドラ・プラデーシュ州にはカプと呼ばれるカーストがある。このヴァルナはスードラであるが、彼らは農業において強力な存在感を示し、財力や勉学によって有力な勢力になっている。
南インドの特にアーンドラ・プラデーシュ州などではカースト差別の議論が盛んに行われており、差別を克服しようとする動きが活発化している。例えば下位に置かれていたカーストの人々は就職において有利であったり、給料も多少多めに貰える措置が取られている。ただし、下位カーストの生活基盤を底上げしようというこの試みは大きな抗議の声も生んでいる。
さて、なぜ南インドと北インドでカースト制度が異なるのか少し補足しておこう。南インドと北インドでは、同じヒンドゥー教であっても、盛んに読まれる聖典が異なるからだ。例えば北ではシュクラ・ヤジュル・ヴェーダ、南ではクリシュナ・ヤジュル・ヴェーダとなっており、それぞれに内容が異なる点があるためだ。ヒンドゥーには多くの聖典があり、書かれた時代によって意訳が違ったり一部が紛失したりで内容に違いが出ているそうだ。そのため、カースト制度のみならず、ヒンドゥー儀式の行い方にも違いがある。結婚式の際に司祭を呼んで行うお祈りさえスタイルが違うという。
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