ネパールのゲイやトランスジェンダーや同性婚や第三の性表記を解説
世界には男だけど男が好き、心は女だけど外見は男という悩みを抱える人達がいます。従来までは理解されなかったことが医学的に解明されるようになり、性別の認識は脳の遺伝子変異と深いつながりがあることも分かってきました。そういった医学的根拠も助けになり、生まれながら性別の悩みを持つ人々に対するケアの必要性も認知されてきています。個人の意思ではどうにもならない生まれながらのLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー=ニューハーフ)を否定することは人格否定という考え方も欧米では認知されてきているのです。
そんな中、ネパールはゲイやトランスジェンダーに関しては進んだ考え方を持っており、性別選択に関してオープンな国に生まれ変わりつつあります。本記事ではネパールゲイやトランスジェンダーに関するこれまでの経緯と最新状況を解説します。
目次
ネパールのゲイ文化発展の歴史
ネパールのゲイに関する保障
- 2007年ネパールゲイが合法化
- 2015年ネパールで第3の性の表記が始まる
- 2016年カトマンズに多くのLGBTが集まり、法の正当な履行を求めた
- 2017年ネパールで同性結婚が成立
伝統的なゲイ文化ヒジャダ
ネパールがゲイに寛容になれた背景には、実は昔からゲイやトランスジェンダーの人々がいたこということもあると思われます。ネパールのトランスジェンダーは現地語でヒジャダと呼ばれてきました。
ヒジャダは特定のカーストグループではなく、思春期に自身の性別に疑念を感じ、男性を辞めたいという思いや、女性として見られたいという思いなど、それぞれにさまざまな悩みを持った人々の受け皿としてできたコミュニティです。
先輩と共に暮らしながら、男性を辞めたい人は男性らしさを求められない、或いは女性的になるたい人は女性とみなしてもらうことで、おざなりにされてきた本当の気持ちを開花させていきます。
男性的でいたくないからといって、必ずしも女性になりたいわけではない点は見逃せません。ヒジュラの人々は通常化粧はあまりしていません。髪の毛を長く伸ばし、女性用の衣服を身に着けていますが、顔は男性そのものです。純粋に男性ではない性として生きる人々もいることが分かります。
ともかく、ネパールには昔から男性を辞めてヒジャダになるチョイスもあるという伝統文化がありました。よって一たび科学的な理解と、心のケアというスポットライトが当たると、割とスムーズに共感者を得ていったようです。
以前まではヒジャダは社会的に阻害されていました。また偏見によってたびたび女装した娼婦と同視される傾向もありました。確かにネパールには女装した男娼などいますが、ヒジャダーとは根本的に異なることです。
ネパールでゲイが合法化
2007年ネパールはゲイを合法化しました。それまでは違法だったというのは驚きですね。この年からネパールはそれまでの保守的な姿勢から、LGBTを不当な差別から守り、法の下に保護する方針に転換しました。
ゲイであることを隠して結婚する男性達
ネパールは部族社会でやってきました。今もその名残が強く残っています。最もこの名残が強く現れているのが結婚です。部族の男達は、結婚適齢期が来ると必ず親の意思か、本人の意思で結婚しなければなりません。そういった状況下で仕方なく結婚ゲイの人もいると言われています。ゲイという生き方にスポットライトがあたると、ゲイであることを自己否定していた人がゲイを自覚しだすかもしれません。それは今後ネパールでのゲイカルチャーの発展次第です。
ゲイの同性結婚
2017年ネパール西部のダデルドゥラ地区でついにネパール人同士の同性婚が認められました。「O」パスポートを所有する本人にしてみたらこれは同性婚ではなく異性との結婚であるわけですが、それが公的にも認められました。
ネパールでゲイを許容する第3の性パスポート
2015年ネパールは第3の性表記のパスポート発行を開始しました。個人的な経験から私はネパールという国は寛容だと感じてきましたが、パスポートに第3の性を表記するようにもなっているそうです。性別の表記はMでもFでもない「O」つまり、男性でも女性でもないOTHER(その他)です。男ではないけど女性でもない、そもそも男でないなら女か、という考え方を超越したOTHER。これは隠れゲイの人々に大きな勇気を与えたことですし、実際に「O」パスポートを取得した人々がメディアに登場することで、ネパール国民の意識にも変化をもたらしました。ネパールの入国審査表にも、入国者の性別記入欄に男性、女性、のほかに第3の性も書かれています。
ネパールでゲイが多い場所
タメル
ネパールのタメルには経営者がゲイであったり、ゲイの人々が集まるバーもあるようです。ゲイの人々は出会い系アプリを使って仲間を探し、互いを励ましあい、メンタルケアを求めています。またタメルであれば外国人のゲイも来ます。(観光客のなかにはゲイの人もいるということ)
ラトナパーク
ラトナパークは交通の要衝で私もバスを使うときはここを通りますが、やっぱりラトナパークはゲイが多いなと思います。ラトナパークのダルバーマーグ側を歩くと必ずゲイの人たちがいます。夜になると今度は女装した人々に変わります。
ネパールのゲイのイベント「Mr Gay Handsome Nepal」
Mr Gay Handsome NepalというネパールのLGBTコミュニティ「ブルーダイアモンドソサエティ(Blue Diamond Society)」によって開かれたゲイの大会です。優勝者には50000ルピーと優勝トロフィーが与えられ、この大会の目的はハンサムなゲイを表彰するのみでなく、ゲイあることを恥じず、まず自分自身がゲイとしてしっかりと自己主張して生きることがゲイに対する理解や認識を向上させるというコンセプトで開かれました。
ネパール人ゲイ・トランスジェンダー有名人
Sunil Babu Pant
彼はネパールのLGBTコミュニティーである「ブルーダイアモンドソサエティ(Blue Diamond Society)」の創設者です。ゲイ向けの観光サービスを提供するPink Mountain Travelsの運営も行っており、その他さまざまなゲイ・同性愛者の人権を保護する活動をおこなっています。
Anjali Lama
ネパールのトランスジェンダーモデルです。トランスジェンダーとして始めてファッションショーに参加するなど、若者やメディアの注目を集めています。
monika shahi
ネパールで最初に同性婚が認められたトランスジェンダーです。
ネパールで男同士が手を繋ぐのはゲイとは関係ない
初めてネパールに行ったとき、私は男から手をつながれました。空港から駐車場に向かうときに、私の手を握って車まで案内されました。びっくりしましたが、瞬時に私は『これは文化的なものだな?』と思い、失礼にならないよう手をふりほどきませんでした。それから、農村など、昔のネパールの残る地域に行くと私は手を握られることが多かったです。このあたりを見せて回ると言って、手をがっちり繋がれて歩き回るわけです。これらに私はゲイと感じたことはありません。好意と敬意を感じますから、そのまま真顔でしっかりと話を聞いておりました。
ネパールはでゲイやトランスジェンダーをいけないことであるように考えることは思いやりに欠けること、また、馬鹿にすることは良くないこと、という認識は一般化しつつあります。ゆっくりですが確実に人間の生き方を尊重する歩みを進めています。これはネパールが諸外国より進んでいる点の一つといえるかもしれません。平等な尊重を求めゲイであることをもう恥じない決意をした人々の活動の成果ともいえますが、一方でまだまだ就職などにおいては一般化が追いついておらず、克服されるべき課題が残っているようです。以上。