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ネパールはどんな国?

ネパール人の人種意識 アーリア人とモンゴロイド

多民族国家ネパール

ネパール人は対外的に愛国心が強く、ネパリとしてのアイデンティティのもと、非常に集団高揚するが、国内は一枚岩ではない。それは政情に対する不信に留まらず、ジャーティ(階級:英語ではカースト)や宗教(ネパールはヒンドゥー教だけではない)ごとの区別意識、或いは身分差別意識、文化的な距離感が各グループごとに渦巻いている。あらゆる人種が民族グループに別れて別々にやってきた珍しい国だ。人種は大まかにアーリア人とモンゴロイドで大別されている。
まず、アーリア人のおさらい。
当ブログの過去記事、ネパールの構造まとめの、諸民族とカースト制度の項から一部引用

どこにでもいる典型的なネパールのアーリア人男性の顔

南アジア、中東、中央アジアにまで広がるこの人々は、ドイツがアーリアを提唱する以前、太古の昔から自らをアーリアと呼んできて人々である。 ヒマラヤ山脈は西にいくほどアーリア人が多く東に行くほどモンゴロイドが多くなる。ネパールはちょうどその中間に位置し、アーリアとモンゴロイドがだいたい半々の割合でいるが、この二つの人種はミックスしているわけではない。彼らは決して交わることなく、この地域に介在してきた。カーストという身分制度、連綿と続く血統主義で混血が抑止され、大昔からの人種の顔が残っている状態だ。
インドからネパールにまたがる長大なヒマラヤ山脈沿いで暮らすアーリア人達。現在のインドとネパールという国境で分けて考えると見落とすが、インドとネパールにまたがるヒマラヤ沿いの地帯を一つに、『山を利用した生活スタイルを基礎にした文化圏』とみてみよう。ヒマラヤの山々を生存圏に選んだ人々が山脈伝いに広がったと。

典型的なネパールの風景 すべての山、丘にどこまでも村がある。

北インドの山々に連なる段々畑

ヒマラヤの丘陵地帯は外敵から侵入されにくく、緑と水源が常に確保された山々という点で、大昔は平地より良い環境だったかもしれない。 今の国境は後からそこにできたものだ。つまり人種的に彼らはインドかネパールかではなく、西からヒマラヤ沿いに進んできた同一のアーリア人なのだ。その彼らが地域ごとの勢力に分かれていたにすぎない。実際、本記事中で紹介するクマイバウンのようにインド北西部に明確にルーツを辿れる人々もいる。公用語であるネパール語も現地ではカースと呼ばれ、カース系の類似する言語がヒマラヤ沿いに広がっている。北西インドからネパールへ続くヒマラヤ地帯を横断して見ればそこに連脈する文化があることをより実感できる。

ヒマラヤ沿いのインド・アーリア系についてはこちらの記事もどうぞ: ネパールの人種意識は、アーリア系かモンゴロイド系かでまったく異なっている。アーリア人たちは今もってアーリアのみで交配する血統主義の思考が強い。対してモンゴロイドは部族主義ではあるが、血統に関しては外部の混入もわりと容認している。 アーリアの血統主義の例としてはこちらの記事もどうぞ: アーリア人は非常に美人が多いことも特徴の一つである: さて、とはいえ、長い歴史のなかで混血したものも当然いるため、時にはアーリアともモンゴロイドとも、どっちとも呼べる顔もいる。それらは混血の濃淡や出身ルーツ、民族によって各カーストに分かれて行っている。各カーストごとでそれぞれ別々の決まり事などができている。そのため、ネパールでは相手の所属するカースト・民族・人種を知ることは、その文化を尊重するうえで重要だ。礼を失しないためにも分かっていないといけない。

ネパールは顔(見た目)でカーストが識別できる

さて、ネパールにはあらゆる種族がいるわけだが、各グループ内では驚くほど似た顔が多い。
例えばモンゴロイド人種系の民族にマガールとリンブーというグループがあるのだが、マガールグループにはマガールの、リンブーグループならリンブーの独特の顔があり、顔を見ただけである程度グループを識別できてしまう。 ネパールのモンゴロイド例: アーリア系ネパール人の特徴的な顔 例:
モンゴロイドの日本人と台湾人を見て、なんとなく違うなと思うことはあるだろうが、ネパールでは一つの国の中で台湾人のような顔のグループ、日本人の顔のようなグループに別れた状態が維持されている。
血統主義で自らの所属するグループとの婚姻を守ってきたことで、各部族の混血が低く抑えられてきた。それは、部族ごとの顔を固定化させた。

ネパール人の顔 アーリア系かモンゴル系か 二つの「ぽい」

外見での話、全人口の1割いるバウンを省けば、大多数のネパール人はモンゴロイドかそのミックスにしか見えない。限りなくバウンに近いジャイシや、カトリなどもいるが、それらは少数派である。 ネパールでは、限りなくアーリアに近いモンゴロイドか、限りなくモンゴロイドに近いアーリア、ようするにアーリアとモンゴロイドの混血が自称アーリア人のほとんどを占め、純粋なアーリアは少数であるように見えるのだが、ネパール人の目は大雑把だからなのか、あまり分かっていないようだ。カーストによる先入観もあるようだ。例えばチェトリであればアーリアグループという認識がある以上、どれだけモンゴロイドに見えるチェトリでも自他ともにアーリアだと言い張る。これはモンゴロイドに対しても似たようなもので、われわれ日本人が東南アジア系と極東アジア系の違いぐらいは分かるのに対し、ネパール人はすべてモンゴロイドとしてしか認識できない。 ともかく、大雑把にアーリアかモンゴロイドかで大別するのがネパールの人種主義だ。モンゴロイドは『モンゴリアン』と呼ばれている。(モンゴル人の意味ではない)
これはバウンにとっても都合が良いだろう。アーリア系を自称し名誉にする兵隊(チェトリ)がアーリアを人口マジョリティにしてくれ、体制を保証してくれるのだ。

ネパールのモンゴロイドはシェルパ、マガール、タマング、ラマ、グルング、ネワールなどで、ネワール以外は山岳地帯に広く分布してきた。
アーリアはインド系の民族で、バウン、チェトリ、ダマイ、ガイネ、サルキなど諸グループがある。その容姿は中東やロシアのようなものから、アジア的な何かを感じるもの、パプア・ニューギニアやアボリジニのようなものまで色んな顔があるのだが・・・
この点を、自称ピュアアーリアン、またはアーリアンを自認する人々は語りたがらない。特にカースト制度でタガダリ(ハイカースト)に属した人々は。

曰く、「私はピュアアーリアンです。」

どう見てもモンゴロイドが入っていると言うと、頑なに否定し、まるで下の階級であるモンゴロイド系ネパール人と一緒にされたくないとでも言わんばかりに嫌がる。我こそはタガダリのアーリアと言うわけだ。アーリアとは主に突き出た鼻と異様に窪んだ目が識別ポイントである。一方モンゴロイドはマトワリ(中位階層)に指定されていた。
(カースト制度はアーリア人グループのローカルルールで、そんなのこっちは認めたこともないよと言うモンゴロイドもいるのだが。それは別記事

同族嫌悪?あるチェトリ青年の例

ここに一つの例を出そう。
私の知人のバウンとチェットリの青年とで茶を飲んでいたときのこと。

私はチェットリのその青年はモンゴロイドにしか見えないと話していた。青年はこれを不服とし、自分はアーリアンだと息を巻いた。しかし、海外に長くいたバウンは「海外を知ってりゃわかるが、こいつはモンゴロイドだ」「だが知らないだけだ」と言い放った。チェットリ青年の何とも悔しそうな顔をしていた。

チェトリの発生条件を見ると一層にそれが実際にモンゴロイド諸民族との混血である場合もある。それについては以下の別記事リンクにて:
いずれにしても、かつてアジアのこの地域を支配したアーリアンは、部外者に対しては自尊心を完全に奪いさるほど、徹底した差別主義を長い長い時代敷いてきたわけだ。
ある意味で、そのチェットリの青年は今もってカースト制が敷いた身分や階級という楔の犠牲者だ。
私はこれに南米と似た現象を感じる。いわゆるコンキスタドール。スペインポルトガルが南米に侵攻、それによって白人や白人に連れられて来られた黒人奴隷と原住民との間に産まれた混血児のメソティソやムラートは、互いをその肌の色で差別し合うまで自尊心が墜ちていると言う。「私にも白人の血が入っていれば」と言う発言もあるようだ。この南米の混血したインディオたちの顔立ちはネパールとそっくりである。この点においてはネパール人が南アジア一帯の原住民と西から来た異人種との混血顔であるという以前からの感想を一層感じてしまう。ちなみに侵略地に混血をもたらしたスペインポルトガルも太古にイスラムから侵攻されモロッコやアラビアと混血した過去がある。

アジア人

そのバウンは、「ネパリ(ネパール人)はモンゴロイドだ」とグローバルな観点で語った。おそらく海外で色んな人種や顔を見て、それぞれがどう分類されていたかを感じての感想だろう。
また、私の家内(バウン)もチェトリの顔はややモンゴリアン的な要素があると言う。

ネパールで『アジア人』と言った言葉を知るネパール人は一部の知識人だけである。ネパールでは地位のある人間が必ずしも知識人であるわけではないが、海外に出たことがなくとも、教養のあるネパール人はアーリアかモンゴロイドかを前面に打ち出して語らない。アジアの混血民族の一つであることは、見渡せば自明であるからだ。
しかしそもそも、実は私はたまたまそのチェトリがモンゴリアンの風味が濃く見えただけで、ネパール人全員がモンゴロイドと言ったのではなかった。その知人のバウンなどは西洋人より彫りの深いいかにもなアーリア顔であった。
バウンにはいかにもなアーリア顔もいるが、モンゴロイド感が多少ある人、オセアニアンやオーストラロイド・ドラヴィダ(南方)との混血を漂わせる顔立ちなどもいる。インドに行くと(つまり南に下るほど)これは更に顕著になる。

ネパールの人種間・カースト間の対抗意識

アーリア人はなんとなくモンゴロイドを下に見ているが、ではモンゴロイドはアーリア人をどう見ているだろうか。
ネパールは、日本や中国などのようにモンゴロイドだけの国ではなく、常時アーリアという異人種と接してきた。そのため彼らは非常に対抗心が強い。まず彼らはモンゴロイドが一番良いと信じている。続いてアーリア人を良く思っていない。特にバウンに対する評価は非常に厳しい。陰口にとどまらず、目の前で邪険にけなす場面もけっこう見た。

ネパールに旅行に来て、アーリアンかモンゴリアンかと言う話を聞いて困惑する人もいるだろう。
しかし、彼らの視野はネパールローカルの感覚に過ぎず、他国多人種の顔も知らない無知な人々がほとんどで、モンゴリアンと言われて不快に受ける必要はない。モンゴル人との意味ではなく、「モンゴロイド」とか「モンゴル的な」を意味しているだけだし、モンゴルという国があることさえ知らない人も沢山いるのだ。

※カースとは、ネパールとクマオン(インド)に分布するネパール語を母語としヒンズー教を信仰する種族
※ネパールではモンゴロイド顔は全てモンゴリアンと呼ぶ。
※それ以外はアーリアンと呼ぶ。
※ただし、自称アーリアンもモンゴロイド混血にしか見えないケースが多々ある。
※モンゴロイド混血を言うと、全力否定する人々がハイカーストには多い。
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